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ラストスピーチのオバマ氏が目論む首都残留の狙い

ラストスピーチでは涙を拭う場面も見られた
Photo:Kyodo

「あなたたちが私を良い大統領にしてくれた」

 アメリカのバラク・オバマ大統領は1月10日、シカゴで8年の統治を総括する送別演説を行った。歴代大統領はワシントンで別れの演説をするのが慣例だが、ホワイトハウスが公式に「送別スピーチ」と名づけたこの演説は、オバマ氏が最初に政治活動を始めたシカゴが舞台に選ばれた。背景には異例の“政治意図”があるようだ。

 この演説においてオバマ氏は実雇用の増大やキューバとの国交樹立、イランの核開発防止、オバマケア(医療保険制度改革)など在任中の実績を語り、聴衆からは「あと4年!」という歓声もあがった。

 オバマ氏は「それはできない」と答えながら、次期政権への円滑な移行を強調したが、一方で「なお課題として残る民主主義への脅威」として「国民の間の経済不平等」や「人種問題」をあげて、トランプ氏への遠回しの批判をも滲ませた。

 この演説を、“オバマ史上最高のスピーチ”と評する向きもあるが、オバマ政権の治政については「米国民の多数派からみて成功よりも失敗が大きい」(政治学者のライアン・ストリーター・テキサス大学教授)という分析が多い。

 オバマ政権の主要政策を全否定したトランプ氏が大統領に当選し、連邦議会から各州議会まで共和党側が歴史上、最多の議席を得た事実がその証左だというのだ。オバマ氏の輝ける「遺産」は、どうもきわめて少ないようである。

 しかしオバマ氏はなお「遺産」を確保しようとする姿勢をみせている。送別演説でも「今後、民主主義の基本的な課題にかかわる事態が起きれば、私も介入しないわけではない」と述べた。

 さらにオバマ氏は大統領退任後もワシントンに居を構える。次女のサーシャさん(15)が地元のハイスクールを終えるのに2年半が必要とのことだが、真の理由は「首都に残って民主党の指導者として反トランプ政権の政治活動を続けるため」という観測がしきりである。

 いずれにしろ退任後の大統領が首都に留まるのは約100年前のウッドロー・ウィルソン氏以来、となる異例の身の処し方であることだけは確かだ。

古森 義久 (在米ジャーナリスト)

この記事の掲載号

2017年1月26日号
2017年1月26日号
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2017年1月19日 発売 / 定価400円(税込)
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