THIS WEEK 週刊文春 掲載記事

金融庁が介入
三井住友信託銀行 トップ人事迷走

住友信託銀行出身の常陰氏
Photo:Kyodo

 大手行では唯一の専業信託である三井住友信託銀行を傘下に置く三井住友トラスト・ホールディングス(HD)の人事が迷走している。

 大手行で最長の8年超トップを務め、いまや「天皇」と言われる常陰均HD会長兼信託銀行社長(62)の影響力排除を狙う金融庁が、人事案に首を縦に振らないのだ。

 金融庁は近年、同行に厳しい姿勢を強めていた。それを同行が実感したのが、昨年2月から4カ月にわたり実施された金融庁検査だった。

 6月中旬、結果の通知を受け取りに現れた常陰氏に、金融庁は異例の「当局の所感」を突きつけた。

「ポイントは3つ。投資信託の販売や住宅ローンばかりを顧客に訴求し、信託の本分を蔑ろにしている。海外与信を急激に伸ばし、大口信用リスクが懸念される状況にある。そして、トップ在任が長く、ガバナンスに問題があるというものだった」(金融庁関係者)

 金融庁は間髪を入れず、二の矢を放つ。金融行政方針に次の一文を盛り込むべく準備を進めたのだ。

〈信託銀行においては、銀行業務と信託業務の双方を行うことに鑑み、信託業務において顧客よりも銀行部門の利益を優先することがないよう利益相反管理を行っているかなどについて検証する〉

 これは、三井住友信託銀行のあり方に「ノー」を突きつけたに等しい。

 慌てた常陰氏は、森信親金融庁長官や遠藤俊英監督局長への面談を求めるも拒否。その後、仲介者を経て、どうにか面談にこぎ着け、原案に挿入されていた「利益相反」に関する文章は削除された。

「金融庁の強硬姿勢に、常陰氏はトップ退任を決意。後任に子飼いの法人担当役員をあてる案を打診するが、金融庁幹部はOKを出さなかった。なぜなら、常陰氏は銀行社長は降り、代表権も手放すものの、HD会長には残る案になっていたからです。常陰院政は認めないという森長官の意向が感じられます」(同前)

 ただ、民間銀行の人事に役所が介入する異常事態に、金融庁の真の狙いは、三井住友信託銀行解体との見方も浮上している。この動きを察知した三菱UFJフィナンシャル・グループでは、幹部に同行を研究せよとの指示が出た。買収も視野にあるという。

森岡 英樹 (ジャーナリスト)

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2017年1月19日号
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