特集 週刊文春 掲載記事
超大型ワイド32本 紅白スクープ合戦

強要告発 香西咲が語る「それでも私がAVに出る理由」

「洗脳が解け、前の所属事務所から鎖を切るように独立したのが2年半前。世間に声が届かなかった当時とは違って、今回は悪徳プロダクションが存在する事実を社会問題として取り上げていただき、警察や弁護士の方も私の話に真摯に耳を傾けてくださいました。諦めなくてよかったと、久しぶりに生きている実感を得ることができました」
 こう語るのは、現役AV女優の香西咲氏(30)だ。

香西氏の告発で業界の闇が暴かれた

 香西氏は、所属事務所社長による洗脳期間を経てAVデビューを強いられた経緯や、性接待を要求された過去を、小誌(7月14日号・同21日号)で2週にわたって実名告発した。

 反響は凄まじかった。以後、全国紙やテレビ、ネットメディアが挙(こぞ)って彼女を取り上げただけでなく、海外の通信社も香西氏のインタビューを配信。出演強要というAV業界の抱える暗部は、全世界に向けて発信されたのだ。

 前後して、警察当局も本格的な取り締まりに乗り出していた。6月には、大手AVプロダクションの元社長ら3人が労働者派遣法違反容疑で警視庁に逮捕されているが(後に罰金刑)、発端は15年秋、同社の元所属女優が「AV出演を強要されていた」と警察に被害を相談したことだ。

「モデルやタレントとしてスカウトされた若い女性が騙し討ちのようにAV出演を強要される被害は、かねてから多く潜在していました。16年3月、そうした被害状況をまとめた人権団体の調査報告書が公表されると、国会でも取り上げられ、警察当局による実態把握の動きも加速した。呼応するように、マスコミ各社も次々とAV出演強要問題の特集を組むに至ったのです」(社会部デスク)

 そうした中、現役の立場から唯一、顔と名前を明かして実体験を訴え出た香西氏の存在は際立っていた。

 香西氏が振り返る。

「実名告発したことに後悔はありません。不本意なかたちでデビューしたものの、私は業界そのものを否定しているわけではないのです。だからこそ、悪徳なスカウトやプロダクションはなくなって欲しいですし、私のような被害者はもう2度と現われて欲しくない。その一心で取材に応じてきました」

 だが、声を上げ続ける作業は過去の傷を抉る行為に等しく、心と身体のバランスを崩したこともあった。

「なぜ現役を続けているのかも繰り返し問われてきました。でも、デビュー前に時計の針を戻すことはできません。だったら現役のセックスワーカーとして自分にできることを、やれるところまでやってみようと。いろいろ背負い込み過ぎてキャパシティを越えたこともありました。今はまず原点に立ち返って過去と決着をつけるべく、年明けから本格的にトラウマの治療も始めます。前所属事務所社長に対する訴訟を見据えた準備も粛々と進めているところです」(同前)

 当のAV業界は今、大きな転換期を迎えている。

「社会問題化して以降、何十人ものAV関係者が派遣法違反等で書類送検されたり、事情聴取や家宅捜索を受けてきた。その中には香西さんの前所属事務所社長もいます。プロダクションやメーカーは所属契約書、出演契約書を細かく見直さざるを得なくなった」(AV関係者)

 国も動き出した。政府による男女共同参画会議でも、AV出演強要問題が4回にわたって議題として取り上げられている。

 最後に香西氏が語る。

「私はいつか、性教育に関わっていきたいと思っています。この仕事の経験が活かせるなら本望です」

この記事の掲載号

2017年1月5日・12日新年特大号
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2016年12月28日 発売 / 特別定価440円(税込)
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