著者は語る 週刊文春 掲載記事

今野晴貴×石田衣良
「ブラックバイト」を許すな!

『西一番街ブラックバイト』 (石田衣良 著)/『ブラックバイト』 (今野晴貴 著)

「失業保険とか、ふざけんな。おまえは会社にいる1秒ごとに損失をだしてるんだぞ」――。

 大人気シリーズ・池袋ウエストゲートパーク最新刊『西一番街ブラックバイト』で著者の石田衣良さんが描いたのは、飲食店チェーン・OKグループによる過酷なノルマに追い詰められ、自分を責め、自殺を図った若者の姿だった。

 2013年に流行語大賞トップ10入りした“ブラック企業”の被害は今や社員のみならずアルバイトにまで広がり、学生を中心とした若者の労働状況は悪化の一途を辿っている。小説でこの問題を取り上げた石田さんと、今年『ブラックバイト』を上梓した労働問題に詳しい今野晴貴さんが語る“ブラックバイト”の恐るべき実態とは。

『西一番街ブラックバイト』
OKグループは若者に過酷な労働を強い、暴力と洗脳で辞めることさえ許さない。遂には自殺を図る青年も……。「おまえはダメ人間なんかじゃない」Gボーイズは若者の未来を救えるか? 文藝春秋 1500円+税

石田 新刊では今野さんの4年前の著書『ブラック企業』(文春新書)をずいぶん参考にさせてもらいました。

今野 ありがとうございます。『ブラック企業』を出したのが2012年ですが、翌13年くらいには“ブラックバイト”というものが顕在化してきました。

石田 じゃあ、まだ最近のことなんですね。

今野 ええ。最初は全貌がよくわからなかったんですよ。とにかく大学生が、勤め先から過度な労働を強いられたり、パワハラを受けたりして、肉体的にも精神的にも疲弊し、学校へ行けない状態になっているという話を聞きまして。

石田 まさに今回、僕が小説で取り上げるきっかけになったのも、親戚の子が学校に行けないという話を聞いたからなんです。スニーカーが好きで、靴の量販店チェーンでアルバイトをしようとしたら、「大学のスケジュールより、アルバイトのシフトを優先しなければうちは採用しない」と言われたらしい。

今野 それは典型的なブラックバイトですね。現実には、たとえ事前にだいたい週何回のシフトと約束していても、いざ働き始めると約束以上のシフトを入れ、さらに精神的にも追い込んで、バイトを辞めさせないようにする雇い主がたくさんいるんです。

石田 別の親戚の子も、居酒屋のアルバイトをしていて給料の未払いがあると。これは今の日本の若者の働き方がひどいことになっているぞ、と実感しまして。

『ブラックバイト』
バイトが学生を壊していく現実を多くの例で紹介する 岩波新書 820円+税

今野 昔の学生アルバイトって、雇い主の側にも「まずは学業を大事にして」という意識があったかと思うんですが、現在ではコンビニや飲食店で24時間業態が広がり、そこの穴を埋めるための使い捨ての戦力として学生バイトが重宝される構図が生まれています。

石田 今野さんの新著『ブラックバイト』を読んで驚きました。誰もが知っている有名企業でも、雇い主側が学生に売り上げのノルマを課して、足りない分は自腹で穴埋めさせたり、アルバイトを辞めようとしても「雇用契約期間が終わっていないから損害賠償を請求する」と脅される事態すら起きているんですね。サービス残業も当たり前だし。

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この記事の掲載号

2016年9月8日号
2016年9月8日号
「五輪予算」膨張の裏で都議会ドン関係企業続々受注
2016年9月1日 発売 / 定価400円(税込)
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