著者は語る 週刊文春 掲載記事

「死んだらどうなるの?」
と考えなくなった大人たちへ

『銀河鉄道の彼方に』 (高橋源一郎 著)

宇宙飛行士だった父が、「これは? あまのがわのまっくろなあななのか?」と書かれたメモを残して宇宙船から失踪。ジョバンニは銀河鉄道に乗り、父を捜す旅に出る。列車の中では、「長いコートの人」や、近年の高橋作品でお馴染みのランちゃんにも出会い――。高橋源一郎によって描かれる、新たな銀河鉄道の旅。 集英社 2310円(税込)

「夜になると、子どもは布団の中で、死んだらどうなるんだろうとか、宇宙に果てはあるのかとか考えて眠れなくなる。子どもって哲学的なんです。まあ最終的には寝ちゃうんですけど(笑)」

 高橋源一郎さんの最新刊『銀河鉄道の彼方に』は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフにした長篇小説だ。宇宙飛行士だったジョバンニの父が「あまのがわのまっくろなあな」という謎の言葉を残して宇宙船から失踪。ジョバンニは父を探すために銀河鉄道に乗り、時空を超えた旅に出る。

 死とは何か、宇宙とは何か、いま見えている世界は誰かの夢なのではないのか――こんな、誰もが子どもの頃に一度は考えたことがあるような問いがちりばめられている。

 本作は、2005年から6年間にわたって雑誌に連載され、連載終了から2年を経て単行本化された。

「連載の終り頃に読み直してみたら、辻褄が合わないんです。途中で考えが変わったりして、当初の予定とはだいぶ違うところに着地しました。どう直そうかと思っていたところに東日本大震災も起きました。そうしているうちに結局、これは“世界は辻褄が合わない”という話なのかなと思ったんです」

 05年に刊行された『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』でも宮沢賢治の作品をモチーフにしているが、『銀河鉄道の夜』だけ独立させて書こうと最初から決めていた。

たかはしげんいちろう/1951年、広島生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、06年『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』で宮沢賢治賞、12年『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞を受賞。

「私たちは言葉で説明できないよくわからないものを“異物”と感じて、そういうものから目を背けがちですが、宮沢賢治って言わば文学者の中の異物なんです。普通は作者に影響を与えた人や作品から読み解くことができますが、彼の場合はそれができない。その代表が『銀河鉄道の夜』で、近づこうとすると、こちらも異物にならざるを得ないんです」

『「悪」と戦う』『さよならクリストファー・ロビン』、そして本作と、子どもを描いてきたのは、高橋さん自身、現在子育ての最中だからという。

「子どものことを書いていると楽しいですよ。子どもはまだ大人ほど社会の規則を知らないので、大人より異物感知能力に長けている。

 大人になると、死や宇宙の果てといった抽象的なことを考えなくなります。ですから、小説がそういう場になればいいですね。ぜひ、この小説を暗闇の中で読んで、『怖いよ~』と泣いてください(笑)」

「週刊文春」編集部

この記事の掲載号

2013年7月25日号
2013年7月25日号
7.30「慰安婦の日」に喝! 韓国よ いい加減にしろ!
2013年7月18日 発売 / 定価380円(税込)
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高橋 源一郎

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