著者は語る 週刊文春 掲載記事

なぜ、あのグループは教室を牛耳っているのか――

『教室内(スクール)カースト』 (鈴木翔 著)

本書は著者の修士論文に加筆修正を加えたもの。これまでのいじめ研究をふまえ、学生・教師へのインタビュー調査の他、中学生への大規模アンケート調査の結果も参照しつつ、「スクールカースト」の実像に迫っている。帯裏には古市憲寿氏の推薦文、巻末には指導教員である本田由紀氏の解説つき。 光文社新書 882円(税込)

「スクールカースト」という言葉が注目を集めている。これは、主に中学・高校のクラス内で自然と生まれる「人気」や「地位」の度合いを、インドのカースト制になぞらえて表現したもの。特別な理由もないのに、特定のグループが教室を牛耳り、一方で発言すら許されないグループが存在するという光景は、誰でも覚えがあるのではないだろうか。

 東京大学大学院教育学研究科の博士課程に在籍し、中高生の交友関係についての研究を行う鈴木翔さんの初の著書『教室内(スクール)カースト』は、この問題を初めて学術的に取り扱ったことで話題になっている。

「学生の人間関係についての調査では、いじめの問題を取り上げることが圧倒的に多かった。もちろんそれは重要な研究だと思います。しかし、自殺に結びついてしまうような、殴る蹴るといった事象ばかりを扱うのはあまりに極端なのではないかと疑問を持った。例えば『何となく見下されている気がする』といった、当人でもいじめかどうか判断の付きにくい些細なことは、自分の実体験としてもあるし、似たような苦い経験がある人は多い。最近では小説や漫画でも、『スクールカースト』を題材にした作品が増えていますよね。それでも研究の分野では見逃されていた。まずはその実態を解明することに意義があると考えたんです」

すずきしょう/1984年秋田県生まれ。群馬大学教育学部卒業。現在、東京大学大学院教育学研究科博士課程。専門は教育社会学。主な研究テーマは中高生の交友関係。著書に「恋人の有無が中学生の意識に与える影響」(共著)がある。

 本書では、大学生や現役教師にインタビュー調査を実施。「スクールカースト」の存在を認めつつ、それをむしろ積極的に利用して上手くクラスを運営しようとする教師側の思惑や、消極的に受け入れざるを得ない生徒側の苦悩が、生の声として伝わってくる。

「インタビューでは、カーストの上位にいた人も下位にいた人も、皆が率先して話をしてくれました。また、『スクールカースト』の存在を否定する人が1人もいなかったことも印象的でした。誰にとっても興味のある話題だと改めて認識させられましたね」

 本書の刊行で「スクールカースト」研究の端緒は開かれた。しかし「課題は山積み」と鈴木さんは語る。

「正直に言って、反論の余地も多い論文ではあるので(笑)、細部を詰めていかなければいけません。当面の目標は『スクールカースト』の理論を定式化すること。これまで漠然と感じていた上下関係が『スクールカースト』という名前で一般化されることで、将来的には、苦しんでいる学生が救われる可能性が生まれればと考えています」

「週刊文春」編集部

この記事の掲載号

2013年2月14日号
2013年2月14日号
中国「猛毒米」が日本人を破壊する!
2013年2月6日 発売 / 定価380円(税込)
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鈴木 翔

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