特集 週刊文春 掲載記事
新型うつキャンペーン(4)

「新型うつ」こうすれば治る

鍵は「フラッシュバック」

鍵は「フラッシュバック」

 新型うつの取材では、たびたび非定型うつ病との関連を耳にした。前回、樋口氏が述べたように、新型うつは非定型うつ病で括(くく)れるという見方も強い。

貝谷久宣氏

 貝谷氏はこの非定型うつ病を長年診断する中で、ようやく鍵となるファクターを見つけたという。その鍵は記憶の「フラッシュバック」だ。

「非定型うつ病では、人に言われたことを何でもネガティブに捉えて過敏に反応する『拒絶過敏性』が強く出てくる。それは強いストレスとなり、抑うつ的になる。その過程で見過ごされていたのが、フラッシュバックなんです」

 誰でも失敗したり、怒られたりしたら嫌な記憶として残る。ところが、この非定型うつ病では、その記憶の蘇り=フラッシュバックがわけもなく頻繁に、そして、強く起きる。また拒絶過敏性が強くなると、「今日の服は素敵ですね」という言葉さえ、「ということはいつもはダメなんだ」というネガティブな解釈となり、どんな言葉もストレスに転化される。

「そのせいで、ますます当事者は悪くなっていく。そこで、ある仕組みと同じだと気づいたんです。これはPTSDだと」

 PTSDは心的外傷後ストレス障害と訳されるが、要はトラウマ(心の傷)体験、精神疾患の診断基準にあるれっきとした精神障害である。戦争や災害などの恐ろしい体験を経た人がかかるPTSDは、しばしばその時の体験をフラッシュバックで思い出す。それによって、強いストレスが起き、恐怖や無力感、苦痛を味わう。

 そこで貝谷氏は仮説を立てた。戦争や災害ほど過度ではないが、上司にガツーンと言われたことや激しくプライドを傷つけられた体験も、経験の乏しい彼らにとってはPTSDと同じトラウマなのではないか。だとすれば、PTSDの薬が非定型うつ病の人にも効くのではないか。どの医学論文にも出ていない新たな視点だった。

 そして、昨年秋から非定型うつ病の患者に、インフォームド・コンセントを得たうえでPTSD向けの薬剤を処方した。

【次ページ】 嫌な記憶を活性化させない

この記事の掲載号

2012年7月5日号
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