
二十一世紀版『沈黙の春』の衝撃
『免疫の反逆』 (ドナ・ジャクソン・ナカザワ 著/石山鈴子 訳)
ドナ・ジャクソン・ナカザワ/作家・ジャーナリスト。家族や健康をテーマにワシントンポストを中心に多くのコラムを執筆。ABCニュースのコメンテーターも務める。ニューヨーク在住。 ダイヤモンド社 2520円(税込)
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米国で2350万人、12人に1人という自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病などを含む“現代病”で、その発症頻度が米国で増加している事を懸念するジャーナリストである著者が、自身の発症体験を通して書き上げた力作である。多くの患者、研究者のインタビューを行い、患者の立場から何が出来るか、社会はどのように行動すべきかを、問いかけている。同時に、米国で社会的に最重要視され予算規模も大きい癌や心臓病に比して、自己免疫疾患に対する認識や支援の低さを指摘し、この領域でのより広範な研究活動を促す叱咤激励文でもある。
バッファロー市イースト・フェリーで多発した全身性エリテマトーデスと土壌汚染の問題では、町の住人が集う雑貨店の店主ベティが本症を発症、買い物客である友人も発症することを契機に、20年にも渡ってこれを解決していく手にあせ握るストーリーが綴られ、サイエンス・ミステリーとでも言うべき本書のハイライト部分である。
ただ、米国の限られた医師の意見のみに基づいて構成されている点は残念である。関節リウマチを専門としている医師が登場していたら、診断・治療技術の革新的進歩という明るい視点が加わったであろうし、また、ヨーロッパから発信された環境因子としてのタバコの影響も浮き彫りにされたであろう。日本における炎症性腸疾患の栄養療法や、中国のハーブ治療の状況も触れられていない。紹介された研究は一面的な動物モデルでの観察が多く、それのみが真実であると錯覚する読者も多いのではないだろうか?
それでも、免疫が人の体を守るだけでなく、逆に病気を起こしてしまう事があり、それが稀でない事を考えさせる本書は、『免疫が低下する事がすべての病気の原因』と思い込んでいる日本人には大きな衝撃となるであろう。本書が日本語訳されたことに感謝したい。
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